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インタビュー(4)朝倉健吾さん:Interview with Mr. Asakura [インタビュー]

インタビュー:朝倉健吾さん(朝倉不動産専務取締役)
Interviewee: Mr. Kengo Asakura (Director, Asakura Real Estate)

朝倉さん ヒルサイドテラスの前で:Mr. Asakura in Front of Hillside Terrace

11月7日(火)午後2:00に代官山ヒルサイドテラスのインフォメーション・ルームで朝倉さんとお会いして、朝倉さんが長い間代官山と付き合い、ヒルサイドテラスの建設と運営にかかわってこられたスタンスについてお聞きしました。以下は朝倉さんのお話しをできるだけ正確に伝えるために、朝倉さんを一人称とする引用の形式でまとめたものです。
 (朝倉さんのお話し)
 「不動産業とはどうあるべきか」
私はいつも「不動産業」とは何かということを考えています。通常「不動産屋」は商業的にもうけることが前提で、金銭的な利益を求めますが、それはよい街づくりとは別ものです。本当の街のよさとは、住民にとっての快適さであり、住みごこちのよさであるべきで、それはその街に長く生活した人が感じるものです。したがって、不動産業も長くやってそのよさを実現し促進していくべきものではないかと思います。私どもはささやかながらそれを代官山でヒルサイドテラスの開発と運営という形でやってきたのですが、しかしそれを一事業者だけで全部やろうとしても無理なので、そこに住む人たちが皆で協力して支え合っていかなければなりません。
 「再開発による代官山の変容」
代官山ではこれまで長い時間をかけて住民にとってよい街づくりが進んできたのですが、ここ数年は現実に大きな再開発の波が襲ってきており、このままでは代官山のよう低層で住みやすい環境の街も大きく変容してしまう危険があります。それに対して、私たちは「代スキ会」などを結成して、開発者側と交渉を重ねて何とか異常に高層な開発をチェックすべく運動してきました。しかしそれにもかかわらず、代官山プラザのような高いビルが建ってしまうはとても残念です。ただし、その過程で、開発計画の多少の調整や様々な情報の交換などが進み、多少風通しがよくなったのではないかと思います。
 「説得力のある裏づけが必要」
しかし、そのような開発に反対するという形が本当によかったのかどうかは分かりません。対立的な形をとらずに説得力を持つために、本来なぜ高層の開発がだめか、またなぜ低層なら価値が上がるのかを示す裏づけがあるべきで、低層でもよりよい開発なら業者にとっても住民にとっても利益が上がり、自ずから望ましい妥協点が見つかって、よい街づくりにつながるはずです。例えば代官山アドレスの再開発についても、再開発されることは必然でしたが、それを単なる高層の開発にしてしまったのは代官山のよさを生かしきれなかったといわざるを得ません。もっと代官山らしいものを作っていたら、もっとよい話題づくりになり、もっと本来の価値が上がっていったのではないでしょうか。
 「代官山らしさとは何か」
それでは「代官山らしさ」とは何でしょうか。それはよく「スローライフ、ヒューマンスケール、スローアーキテクチャー」などといわれていますが、重要なことは時間をかけてゆっくりとよいものを見分けて作り上げていくという点にあります。ヒルサイドテラスを設計された槙文彦さんも、時間をかけて作ったことに価値があると言われています。私としては、時間をかける意味は、長くこの街に住んで生活している人たちにとって何がよいものかということが重要で、それはなかなか理論的な分析にはなじまないものです。したがって、私はこれまで不動産業の経営も歴史によって培われた自分の直感や感性に素直にしたがって行ってきたのですが、その結果が時間を経てよいものを残すことにつながったと自負しています。
 「まだ理想には程遠い現実」
ただしそれはある意味で自分勝手なので、外に対して基準やルールが分かりにくいために、代官山のよさがこれまで十分に生かしきれてこなかったきらいがあることも認めなければなりません。理想をいえば代官山のよさは、代官山に住んでいる人たちが集まってイベントを開き、自由に交流し、そこからさらによいものを引き出していけるような環境を作ることです。そのためにささやかなお手伝いをヒルサイドテラスのホールなどを提供して行ってきました。しかしそれはまだ不十分で、代官山のよさを十分に引き出すには至っていません。
 「今後の取り組むについて」
そうしている間にも再開発の波が押し寄せてきてハード面でも破壊的な動きが進みつつあります。何とかこの事態を乗り越えるとともに、代官山をとりまくより広い地域にも目を向けて長期的に代官山のためになるような運動につなげられればと希望しています。具体的には渋谷駅周辺の再開発で、それについては私も渋谷区の会合などで意見を述べて、渋谷らしいよい開発をすべきと主張しています。何とかそのような努力が代官山の将来のために役立ってほしいと願うばかりです。
 (筆者の感想)
以上のまとめに特に付け加えることはありませんが、言葉の端々に朝倉さんの本音を聞けたことがむしろ収穫でした。それは「何といっても先祖から相続したこの代官山の不動産を減らさずに維持していくだけでやっと」という朝倉家の一員としての本音と、「ヒルサイドテラスこそ代官山そのものである」という「ヒルサイド族」の中核メンバーとしての自負心といえます。朝倉さん抜きに今日の代官山らしい代官山は考えられませんし、代官山らしい代官山抜きに今日の朝倉さんは考えられません。その状況が大きく代わりつつある現状に危機感を覚える朝倉さんの気持ちがひしひしと伝わってくるインタビューでした。
 参考文献:
朝倉家の歴史について:
「ヒルサイドテラス物語―朝倉家と代官山のまちづくり」
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4773802170.html
ヒルサイドテラスのHP:
http://www.hillsideterrace.com/

I interviewed Mr. Kengo Asakura in the Information Room at Daikanyama Hillside Terrace from 2:00 pm on November 7. The following is a brief summary of what Mr. Asakura said.
 “What is real estate business?”
To Mr. Asakura, “real estate business” should mean something not to seek commercial profit only, but to realize and sustain a desirable community for long-time residents. However, it cannot be done by one real estate agent alone, but should be supported by all residents in the community.
 “Changing neighborhood in Daikanyama”
A recent boom in urban redevelopment seems to turn the character of the Daikanyama community for the worse, if it is left unchecked. So, Mr. Asakura helped organized a community movement to negotiate with developers and, as a result, succeeded in modifying the plan and attitude of developers to a certain extent.
 “Persuasive argument needed”
However, the conflicting relationship between developers and residents is not really desirable. Rather, we should be able to persuade developers so as to find a compromise to benefit everyone including developers and residents, resulting in a lower density development with higher value than otherwise.
 “What is Daikanyama-style?”
Daikanyama-style often means “slow life,” “human scale,” “slow architecture,” etc., and Mr. Fumihiko Maki, who designed Hillside Terrace, said the value of Hillside Terrace stems from the time we have spent with the community and residents. Mr. Asakura has relied on the intuition and feelings that he has nurtured with the history of Daikanyama in managing Hillside Terrace, leading to a desirable community for residents.
 “Efforts toward ideal community”
Mr. Asakura admits that more transparency and efforts are needed to realize Daikanyama’s full potential, where all residents can participate in various events and interact with each other to create a better community for themselves. That is what Mr. Asakura originally had in mind in offering a kind of public space such as halls at Hillside Terrace.
 “Challenges and prospects”
In the meantime, destructive waves of redevelopment appear to be approaching and we need to face up to this challenge by making all kinds of efforts for the sake of the Daikanyama community. These days Mr. Asakura is giving advice to Shibuya for redevelopment of the Shibuya-station area, based on Daikanyama’s experience, and thus indirectly helping maintain the desirable environment of the greater Daikanyama region.
Throughout the interview, I vividly felt Mr. Asakura’s sense of crisis in maintaining the property that he inherited and the leadership that he has been taking in Daikanyama, which is now being threatened by a current redevelopment boom.


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